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2018/07/08

関西支部第29回春季研究大会報告

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ダウンロードはこちらから参加記(関西春季2018).docx

英語授業研究学会をふり返る
~私を育ててくれた英授研~
姫路大学 立花千尋

時代は昭和から平成に移った時であった。平成元年に勤務していた中学校は阪神間で最も荒れていた中学校の一つであった。昼夜を問わず、生徒指導に追われる日々であった。黒板に板書をしていると教室のどこからともなく物が飛んで来るような危険で荒れた教室であった。しかし、英語の授業は何があっても英語で通してわからせるぞという意気込みであった。荒れた生徒を何とか英語の授業に引きつけたいという思いで生徒と格闘する日々であった。ある日、休憩時間に職員室に戻って来て、大修館の『英語教育』の研究会通信欄を見ていると、「英語授業研究学会」というめずらしい研究会案内が目に飛び込んできた。今ではこの種の研究学会はたくさんあるが、授業そのものを研究対象にした学会は、私の知る限りでは「英語授業研究学会」が全国でも最初にできた学会だったと思う。その当時、私は様々な英語の研究会に片っ端から参加していたが、英授研こそが私が求めていた研究学会であった。なぜなら、公立中学校現場の授業にはまだまだ英語をことばとして使用するという考え方が浸透していなかった時代に、いち早く教室を英語コミュニケーションの場に作り上げようとしていたからである。
英授研に参加してみると、私の思っていた通りの学会であった。学習指導要領にはまだ「コミュニケーション」などの文言が見られなかった時代に、英授研のねらいは英語の授業を英語で行い、コミュニケーション志向の授業づくりを研究することであった。「新学習指導要領の目標」を今から30年近くも前にすでに取り組んでいたのである。その当時としては実に画期的な学会であったように思う。毎回、英文による論文紹介のコーナーがあり、難しいけれど最新の理論を学ぶことができた。これもとても勉強になった。ビデオによる授業研究では、参加者は授業について熱く議論を交わした。「毎時間のウォームアップはどのようにしていますか」「指導過程はもっとスモール・ステップできめ細かく進めるべきですよね」「あの段階でそのような活動をしたのはどのような意図ですか」「あなたの授業はインテイクが不十分ですね」「ディスコースの指導が全くできていませんね」などのコメントや質問が遠慮なく飛び交った。研究会の時間内では言い尽くせないため、さらにそのあとの懇親会で研究会以上に白熱した議論が交わされていた。まるで参加しているだれもが日本の英語教育は自分たちが背負って立っているのだと言わんばかりの様子に見え圧倒された。英授研に参加することで皆さんからとてもよい刺激を受け、また明日から一層頑張るぞという気持にさせてくれた。ビデオによる研究授業のコーナーでは、最後に樋口先生の授業に対する講評があり、その講評を毎回私なりに記録して整理してストックした。そして、自分の日々の授業づくりに活用し授業改善を図った。
例会に毎回欠かさずもくもくと参加していると、1年経ったころ、樋口先生から「発表してみないか」と声をかけていただいた。最初の発表は、前任校で3年間取り組んでいた「英語授業における形成的評価の在り方」というテーマで、研究発表を行った。それを皮切りに、ビデオによる研究授業も度々発表させていただき、「定例会100回記念大会のビデオによる研究授業」も発表させていただいたのは実に喜ばしいことであった。やはり自分の授業を参加者の先生方からいろいろな視点で批評して頂くのは実に勉強になった。また、発表に備えてビデオで自分の授業を何度も観察することによって、客観的に授業を観察でき、授業改善のよい機会となった。これもまさに英授研のお陰である。
最近の英授研の様子を見ていると、フロアーからの意見や質問は発表者に対しても実に優しく穏やかであるように思う。それはそれなりにとてもよい事ではあるが、英授研発足当時の例会は、荒々しくストレートで語気の強い白熱した議論ばかりであったような気がする。発表者の中には、あまりにもストレートで本音を突きつけるコメントに耐えきれず泣いてしまう人や、1回限りの発表でもう2度と来なくなった人もいた。しかし、そのような本音トークの議論こそ英授研の目玉であったように思う。そのような他にはない白熱した「英授研」が私は大好きであった。また、本音トークの英授研だからこそ授業力も鍛えていただいたのではないだろうか。
私は、本年度末で44年間の英語教員生活を定年退職となるが、今後の英授研の行く末をいつまでも楽しみにしている。今後、英授研に望むことは、「英語コミュニケーション能力」の育成を第一に掲げている以上、研究会で折に触れ、「コミュニケーション能力とはなんぞや?」をもっと深く議論するべきではないかということである。英語という言語を学ぶ目的、言語や言語使用の本質、また言語とコミュニケーションの関連などについてさらなる実践・研究がなされ、生徒が英語を学ぶこと(英語を使うこと)に喜びを感じるような授業づくりができる研究学会であり続けることを願う。やはり、発足当時から掲げてきたスローガンである「理論と実践の融合」を目指して、さらなる英授研の発展を願っている。


英語授業研究学会 関西支部 第29回春季研究大会(平成30年6月10日)参加記

1.映像による授業研究と研究協議
(1)中学校「教科書題材からパフォーマンス課題へ―グループビブリオバトルをゴールに設定して(中2)―」
授業者:熊上 絵里(大阪教育大学附属池田中学校)
コメンテーター: 和田 憲明(姫路大学)

熊上先生の授業を見せて頂き、驚くことが多々あった。そのうちの一つが、授業の雰囲気についてである。クラスを持たれてまだ一ヶ月と少しと言われていたが、生徒との関係が十分構築されており、生徒は安心できる環境で授業が受けられていた。その要因していくつか考えられるが、一つ目として授業規律が明確に決められていることである。特に印象深かったのは、生徒一人ひとりが友だちの発表を聴く姿勢がしっかりとなされていた。会話練習の後、ボランティアとして、生徒の一人が前に出て発表する時、聴く方は相づちを打ったり、反応をしたり、また良い点を発表できる環境があった。多くの生徒がボランティアとして積極的に挙手ができる温かい雰囲気が授業のなかで感じられた。
 そして、また、授業到達目標が明確にされているのもよいのだろう。「絵本が伝える隠されたメッセージを改めて生徒に考えさせることを最終ゴール」として、生徒全員が真剣にその準備をしていた。パターンを変えた音読でも、終始笑顔で取り組むことができ、授業を楽しみながら参加している様子が見られた。
 最後に、熊上先生が中学校最終目標として、「ディベートの中で、怖じけず、活発に議論できる生徒を育てたい」と言われていた。今後の生徒の成長が楽しみである。映像を見た際、もっと驚くことが増えるであろう。
秋山 容洋(姫路市立四郷中学校)
 


(2)高等学校「教科書の題材を深め、表現の能力を高める授業(高1)」
授業者:有馬 麻子(大阪府立富田林高校)
コメンテーター:大喜多 喜夫(関西学院大学)

有馬先生の授業は、継続的な取り組みを通じて生徒の「書くこと」に対する積極性が育まれ、その表現力の高まりを生徒自身も実感していることを伺えるものであった。継続的な取組を見通した教師が織りなす授業には、学ぶべきものが多い。この実践からの学びについて、当日の助言者でもある関西学院大学の大喜多教授の指導助言を踏まえ以下の4点に取りまとめる。
①教科書で学んだ題材(日米の文化論)が、「表現したい題材」として無理なく活用されている。
②子どもたちに話しかける有馬先生の英語表現が、「子どもたちに分かり易い」ことに配慮されている。このことは、生徒が安心して授業に参画できるだけでなく、生徒たちの良い見本となっている。
③いくら題材が魅力的で生徒に「書きたい」という期待感があったとしても、「(自分はこの題材について)書くだけの英語力があるのではないか」という「できる」ことへの自己有用感がなければ表現活動は成立しない。有馬先生の授業では、継続的に「英文を書かせる」場面を授業内外で普段より設定されているため、生徒の英語を書くことに対する基礎体力が高くなっている。
④書かれた英文が個人の感想程度で完結せず、クラスメイトと交流することでクラスとしての社会性がはぐくまれる授業となっている。
昨今、「英語教育改革」の号令のもと、何かと話題の多い英語教育において、しっかりとした見通しのある、生徒が安心して生き生き表現活動ができている実践に光が当たることや、そのような授業を共有できることそのものが英語授業研究学会ならではの成果といえるのではないだろうか。
信田 清志(大阪府教育センター)


3.シンポジウム「アクティブ・ラーニングの手法を取り入れた思考力・判断力・表現力を育てる授業の在り方-新学習指導要領で求められるポイント―」

発表者:菅正隆(大阪樟蔭女子大学)
 松下 信之(大阪府教育庁)
 加藤 京子(兵庫県立北条高等学校・非)
コーディネーター:國方 太司(大阪成蹊大学)

 アクティブ・ラーニングを踏まえた新学習指導要領(以下、指導要領)の理念を実際の授業で活用するための具体的なヒントについての提案がなされた。菅先生からは、小学校では英語専科教員が必ずしもうまく機能していないこと、将来的な時間数の確保への懸念などの指摘がされた。中学・高校については、扱う内容の増加や高度化により、教師の指導力が大きく問われるものになってくること、大学入試での外部試験の導入によるダブル・スタンダードによる高校現場の混乱への懸念が示された。松下先生からは、指導要領への対応を考えるよりも、「大学入学共通テスト 平成29年度 試行調査問題」「全国学力・学習状況調査 英語予備調査」といった動向に注視し、どんな力を授業で育成するかを教師が具体的にイメージすること―例えば、その授業のスピーチの活動を通して何ができるようになっているのか?構成、接続詞の使い方などの目標を具体化して指導していくこと―の必要性が指摘された。加藤先生からは、「社会的な話題」という言葉が示されたこと、語彙数の増加や文法の高度化は、生徒が英語で表現できる内容をより深めることができるようになることへの期待が示された。しかし、文法指導では、従来の演繹的な指導による幻想(説明がよければ理解できる)がある限りうまく対応できず、帰納的な指導(使うことで生徒が気づき、習得する)へのシフトを大切にすることが強調された。 
新谷 彰男(岡山市立京山中学校)
 

4.講演「英語授業における内容言語統合型学習の実践」
講演者:村野井 仁(東北学院大学)
司会:加賀田 哲也(大阪教育大学)
 
CLIL(内容言語統合型学習)はもともとバイリンガル環境にあるEU 言語政策の中で生まれた外国語学習で、意味のある内容での言語教育の重要性(Content)とインターラクションの重要性(Communication)が強調されており、さらに思考活動(Cognition)と協同学習(Community)が組み合わさる。CLILは多様性と柔軟性を保つため、昨今世界的に普及されつつある。ご講演をいただいた村野井先生からは、CLILの理論的背景、日本におけるCLIL的英語実践の可能性とその具体的な活動例を示して頂いた。フロアからは検定教科書を使う日本の環境の中で、日々の授業ではどのようにCLILと結びつけたらいいかという質問があり、村野井先生から領域統合型英語授業としてのPCPP(Presentation, Comprehension, Practice, Production)とCLILを結びつける提案がなされた。
 村井先生が示された活動例はどれも学習者を社会的存在として捉え、意味のある事柄について理解し、考える活動が含まれている。そして村野井先生が言われる学習者の「声」が引き出されている。実際の生徒の作品例を幾つか示して頂いたが、それらを見て熱いものがこみ上げた参加者は少なくはなかっただろう。何のための英語教育か。村野井先生は共生のための英語教育(TEFL for empowerment)、そして豊かな人間を育てるための英語教育(TEFL for enlightenment)だと言われる。その明確な答えは2011年の東日本大震災以降、先生自身が英語教育に対し、そして英語教師としての問い直しをされた結果である。英語教員としてこれから日々の授業実践の中で、本物の学びを促し、かつ豊かな人格を育てる授業を行えるよう目指していきたいと感じた。
米崎 里(甲南女子大学)


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