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2018/11/20

関西支部第30回秋季大会報告

Tweet ThisSend to Facebook | by KONTA Kenzo

発表することの大切さ

千代田区立九段中等教育学校 本多敏幸

 

 巻頭言を依頼され、何について書こうか迷った。新学習指導要領、勤務校である九段中等教育学校などいくつか頭をよぎったが、「発表することの大切さ」というタイトルに決めた。なぜなら、英語授業研究学会が「発表を聞いて学ぶ場」であるとともに「発表を行って成長する場」でもあるからだ。

 まず、自分自身が発表したことについて記憶を辿りながら書いてみたい。1983(昭和58)年9月に採用された最初の勤務校は、当時、都内でも個性の強い学校で、いわゆる「教育困難校」だった。ベテランの先生でも授業が思うようにいかないようであった。採用のための面接で「体は丈夫?」と質問された理由がわかった。採用日の2~3日前の夏休み中に学年の打ち合わせがあったが、最初の仕事は壁の落書きをペンキで塗りつぶすことだった。教員として働き始めてから1~2年間、私は英語の授業よりも生活指導や学級経営の方が大切だと思っていた。当時の学校の状況から、「授業」の優先順位を下げてしまったようだ。

 今、1987(昭和62)年624日の学習指導案を見ながらこの原稿を書いている。確か、教頭から「研究授業をしてみないか?」と勧められた。当時の勤務校では、長い間、研究授業が行われなかったようだ。授業に自信があったわけではないが、「勉強したい」という気持ちが少しはあったのと、他校の素晴らしい先生方の授業を見て刺激を受けていたので、「いいですよ」とすぐに引き受けた覚えがある。これが私の教員としてのターニングポイントだった。この年度から生活指導主任となっていたが、そのまま生活指導を第1優先にしていたら、現在、おそらく英語教育から一歩も二歩も離れた位置にいただろう。

 このときの授業はお粗末なものだった。研究協議や講師からの助言をメモした紙も残っているが、「訳について無理があるのでは?」「生徒の理解力に合わせて話せる力をつけさせる」「生徒のやる気を起こさせるための刺激」「実践記録をつくる」「テープレコーダーで録音して振り返る」などの記述がある。英語教育について無知な状態だったので、正直に言って、講師の助言がどれほど理解できたのか今となっては疑問である。

 英授研では、関東支部第30回例会(1995916日)が最初の発表だった。おそらく、久保野先生か池上先生から依頼されたのだと思う。「授業の解説」のメモには、上田明子先生、高橋一幸先生、緑川日出子先生、樋口忠彦先生からの助言内容が書かれていた。ほんの数行のメモで詳細はわからないが、具体的な指導方法についての助言をしていただいたのだと思う。それにしてもメンバーがすごい。

 現在、新規採用者は研究授業をする機会が与えられているはずだ。その後も複数回の機会があると思う。1回の研究授業で得るものは大きい。でも、それは気持ち次第だろう。とにかくこなすだけで嫌々行ったものならせっかくの機会がもったいないものとなってしまう。

さて、「発表することの大切さ」は誰しも肯定するだろう。大切さにはいろいろな意味がある。自身の実践や研究の振り返りができる、参加者や助言者の意見をもとに改善することができる、それを生徒に還元できるなどである。参加者としても何かしらを得ることができる。研究授業でも実践発表でも、声をかけられたら引き受けてほしい。地域の研究会などの運営をしている先生に自ら「発表させてください」と自己アピールしてもよいだろう。英語授業研究学会の例会は若い先生(若くなくても)の発表の場でもある。ぜひ!

 

英語授業研究学会 関西支部 第30回秋季研究大会(平成301028日)参加記

 

1.映像による研究授業と研究協議

(1)中学校「到達目標に向けて教科書題材を活かした授業(中1)」
授業者:谷口 友隆(相模原市立大野南中学校)
コメンテーター:松永 淳子(大阪府教育庁)

 

 授業ビデオに移る前に谷口先生が日頃から授業づくりでこだわっている5項目(計画的な指導、教科書の活用、やりがいのある授業、英語で授業、英語力をつける)について説明があった。その後に視聴したが、先生のこだわりがいかに生徒のモチベーションを高めるきっかけになっているのかがわかる授業であった。

 まず感じたのはテンポの良さである。Warm Upから前時の復習までの10分間は、BGMを用いて流れるように授業が進められていた。

 次に、生徒には常に視覚的な情報が与えられているという点が良いと感じた。ピクチャーカードを用いての教科書内容の導入は勿論のこと、語順表を黒板に貼り、常に英語の文型が確認できる状況があった。bagpipesという単語が上手く聞き取れない生徒、発音できない生徒がいれば板書をしてみたり、その中でpiepipeの音のルールを確認したりと、随所にポイントをはさんでの指導もされていた。alwaysoftenといった頻度を表す語を、頻度の多い順に並べたりすることもまた視覚的な情報の1つであろう。

 授業の最後には登場人物の2人について紹介する活動があったが、導入の場面で黒板には計画的に情報が散りばめられ、それを見ながら活動ができる板書となっていた。視覚的な情報が助けとなって、生徒たちは非常にアクティブな活動を行うことができていた。

 「この授業ではこんな力がつく」ということが明示されているため生徒にはわかりやすい授業であり、見ていてとても安定感のある授業に感じた。

 

大脇 裕也(大東市立北条中学校)

 

 

(2)高等学校「生徒を題材に引き込む授業を目ざして-コミュニケーション英語の授業を通して-」
授業者:中島 利恵子(群馬県:新島学園中学校・高等学校)
コメンテーター:國方 太司(大阪成蹊大学)

 

 本発表は、20189月におこなわれた高校1年生を対象としたコミュニケーション英語の授業についてである。テキストは、LANDMARK English Communication Iを使用し、Lesson 7 “Eco-tour on Yakushima” (Part14)9回の授業に分けて指導した。本時(Part11回目)の授業の手順は、Greeting (1min)Oral introduction (10 min)Reading the text (3min)Oral interaction (20 min)Explaining grammar points (5min)Reading aloud (5min)Sharing what the students learned (6min)の計画で進められた。中島先生は、生徒を題材に引き込むために、5つ(1. 自分のこととして捉える。2.発問を工夫する。3. 教科書以外の情報を入れる。4. 映像を効果的に利用する。5. 意外性を入れる。)に留意することを大切にしながら授業づくりをされていた。

 本時の授業では、テキストの本文をもとにオリジナル教材を作成して使用した。上記で述べた授業手順Greetingでは、授業に意外性を持たせるために、教師はエコツアーのガイドになりきり、エコツアーの参加者(生徒)に“Welcome to Yakushima”と伝えるところから開始された。Oral introductionでは、教師が生徒に屋久島に関する画像をスライドで見せながら様々な質問(True or False形式)について考えさせ、屋久島に興味を持たせる工夫をおこなっていた。Reading the textでは、オリジナル教材をエコツアーに参加する生徒用のパンフレットとして使用し、各生徒は黙読で内容を理解した。その後のOral interactionでは、本文の内容に関する質問だけでなく、本文に答えが書かれていない質問もクラス全員に考えさせることで、内容を深く理解させていた。Explaining grammar pointsでは、まず、“I’m your English teacher”と生徒に伝えることで、屋久島エコツアーではなく、文法を学習する時間であること示してから文法指導をおこなっていた。対象となる文法事項(現在完了形)は教師が一方的に説明するのではなく、現在完了形と過去形の違いを生徒たちで考えさせることを意識されていた。Reading aloudでは、ペアの片方がエコツアーのガイド、もう片方がエコツアーの参加者になりきり、テキストを自分のこととして捉えさせて音読活動をおこなわせていた。最後に、Sharing what the students learnedでは、 教師が“What have you learned today?”という質問を生徒たちにした後、しばらく考える時間を与え、それから数名の生徒に発言する機会を与えていた。そして、発表した生徒の意見をもとにクラス全員で屋久島についてより深く考える授業づくりをされていた。

映像の後、中島先生から、生徒が英語を上手に話せるのは、英語が好きで人前で話したい気持ちがあるためであると補足説明があった。これに関してコメンテーターの國方先生は、人は会話をおこなう第一声にかなりのエネルギーを費やすが、生徒が会話に入りやすいと思えるように、中島先生はI thinkから始めるように促し、第一声のエネルギーを軽減できるように工夫されている点をコメントされた。また、生徒たちが英語を使えるように場面設定(屋久島エコツアー)をおこなう際、中島先生は“Believe or not, you are in Yakushima now.” “I am your guide.”以外にも、“I hear that all of you are from the same school.” “Is that true?” “What is the name of your school?”などと生徒に語り掛けることにより、生徒がまるで屋久島エコツアーに参加している状況を上手く作り出していることなどを指摘された。

 

盛岡 貴昭(大阪商業大学)

 

4.シンポジウム「これからの小中高の英語教育の方向と小・中、中・高、高・大の連携―次期学習指導要領を踏まえて」

発表者:加賀田 哲也(大阪教育大学)

泉 惠美子(京都教育大学)

向後 秀明(敬愛大学、元文部科学省)

コーディネーター:樋口 忠彦(本学会特別顧問、元近畿大学)

 

「これからの小中高の英語教育の方向と小・中、中・高、高・大の連携-次期学習指導要領を踏まえて」というタイトルでのシンポジウムが行われた。提案者は加賀田 哲也先生(大阪教育大学)、泉 惠美子先生(京都教育大学)、それに向後 秀明先生(敬愛大学、前文部科学省)の3人で、コーディネーターは本学会の特別顧問である樋口 忠彦先生(元近畿大学)であった。加賀田先生からは小学校における英語教育の視点から、泉先生からは中学校における英語教育の立場から、また向後先生からは中等学校の英語教育を中心に、文部科学省の前教科調査官の経験に基づき、次期学習指導要領について広く意見を伺うことができた。  

今回の改訂でのキーワードとしては、私は「コアカリキュラム」をあげたい。実は、このキーワードのもと、小学校、中学校、高等学校の次期学習指導要領だけではなく、全国の大学では英語の教員養成にかかわるカリキュラムが大幅に改編されることになる。文部科学省からの度重なる指摘を受け、提出した新しいカリキュラムが滞りなく認定され、これまで通り英語教員の養成ができることを願っているところである。そして認定されれば2019年度の入学生から、コアカリキュラムに基づいて作成された新たな課程の運用が開始される。このことからも分かるように、次期学習指導要領は、大学における教職課程の教育内容の見直しをも含む、まさに国をあげての大きな取り組みにつながった。

グローバル化が進む新たな世界において、日本の教育を取り巻く諸問題が、OECなどさまざまなデータを基に指摘されている。こうした中で、大所高所から現在の日本の英語教育をリードする4名の先生から貴重な意見を聞くことができたのは、英語教員の教員養成に携わる私にとって貴重な1日であった。

大喜多 喜夫(関西学院大学)

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